Bolt

『ボルト』2008年のウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオズ製作のCGIアニメ映画

人間はこの世に生まれたときから、この文明と無常に彩られた後天の世界に操作されている。人類が造り上げた文明社会の仕組みは、人々を万物の長であるように錯覚させていく。その文明社会の力は膨大であり、強力であり、全てを凌駕する。・・と錯覚させている。

その錯覚に溺れ、人々は奮闘する。いくら奮闘しても何か空しい。成功を手に入れても、無常の幸福を手に入れても。

人間の文明は人間以外の全てを凌駕し、万物の中で成功を収めたようにおごり高ぶる。全ては文明社会の仕組みによって造り上げられた虚空の力である。

それを、映画の冒頭で、自分には本当にスーパーパワーが備わっていると思っているテレビの中のスーパーヒーローシェパード犬、ボルトで表現する。彼は、映画スタッフの科学技術により操られ、まるで自分がその力を持っていると錯覚している。生まれたときから、その世界しか知らず、かつ、自分を操る人々とその仕組みの姿を知らないからである。

人間がこの世に生まれたときから、文明に守られ、本来の人間の姿(先天の性)を知らないことと同じである。本来の人間は、他の万物たちと同じく、非力であり、かつ強力である。しかし、それは自然の力であり、文明の力は人類が造り上げた架空の力である。その力を自分のものとして錯覚し、子ども達が育っていき、将来は他を制覇しようと躍起になり、身を滅ぼし、心をすさませる。自然からかけ離れた空しさと、本当の自分を見失った悲しさに苛まれ、躍起になって自然を、本来の自分を捜し求める。知識や科学にただ頼ろうとするが、大海であえぐありのようにただ疲れ果てて死んでいく。

しかし、ボルトは、最愛のヒロインのティーンズ女優であるペニーに対する愛によって、ある日、彼は勘違いから撮影スタジオを飛び出し迷子になってしまう。そして、ミトンズという雌のネコや、ライノというハムスターに出会いながら、様々な経験を通して、今まで自分の知らなかった現実の世界を学んでいき、素の自分の輝きと素晴らしさを思い出す。

人間の現実は、自然の一員である。他の動物や万物たちと同じように命がある、ただの存在である。文明の力など、虚空のものである。本来の人間の先天の性はただそれだけで、十分幸せであり、そして輝いている。それに気付くのと同じである。

ボルトは次第に、自分は「スーパーパワー」など持っていない普通の犬であることを知る。しかし、愛の力が先天のスーパーパワーを発揮することを知る。文明の力を持っていなくても、ただありのままで、あたりまえに素晴らしい力を備えていることを知る。

人間も同じである。ただありのままに、あたりまえに、素の自分を輝かせれば、現実の自分を全て受け入れることができれば、ただそれだけで、これほど素晴らしい人生がないことを、現実的に知るのである。

虚空の文明の力に翻弄され、成功や幸福という名の無常を追い求め、社会力や文明力を身につけて、それを自分の力と思い込み、熱帯雨林を破壊し、愛するものを見失い、他のものを犯していく人間達に与えるメッセージである。

Apple – Trailers – Bolt.

コメントを残す